改めて『下流老人』とは?その生活の実態と対策を探る
今日は読んだ本の書評です。
今まで読んでいなかったのですが、改めて読んでみようと思い、図書館で借りてきました。
老後破産のリスクが叫ばれている昨今、その先駆け的な本『下流老人』。
3年以上前に出版された本を読み、下流老人とは一体何か、その生活の実態を探り、老後のリスクとその回避策を考えます。
下流老人とは一体何か?
そもそも「下流老人」とは一体どのような人のことを指すのでしょうか?
本書の中で、「下流老人」とは次のように定義されています。
わたしは下流老人を「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」と定義している。
要するに、国が定める「健康で文化的な最低限度の生活」を送ることが困難な高齢者である。
「健康で文化的な最低限度の生活」を送ることが困難であるとなれば、要は生活保護をも必要とするレベルの話。
ただ、普通に生活していても「最低限度の生活」の実態はよく分からないというのが本音です。
どのくらいの生活レベルんになると「下流老人」なのか?
そのあたりについて本書ではイメージしやすいよう具体的な指標を「3つのない」と称して紹介しています。
①収入が著しく少ない
②十分な貯蓄がない
③周囲に頼れる人間がいない
まず下流老人の特徴としては、収入が著しく少なく、普通の暮らしができないということです。
収入が「著しく少ない」というのはどのくらいかというと、例えば東京で生活保護を受けるとすると、一人世帯なら7万円プラス住宅扶助費となるらしいです。
よって、だいたい10数万円程度の収入ということになります。
もし受け取っている年金額が同程度だとすれば、それは生活保護を受けているのとあまり変わらないということです。
次に貯蓄が少ない。
収入が少ないのですから、自ずと貯蓄に頼らざるを得ません。
ところが、現役時代に貯蓄をしてこなければ、老後に破綻することは目に見えています。
そして3つめは、困ったときに頼れる人間がいないということです。
近年では単身のお年寄りが増えており、社会的に孤立してきています。
つまり「下流老人」とは、セーフティネットを失った状態で生きる高齢者ということになります。
このような下流老人には誰もが陥りたくはありませんが、実態として陥っている人が存在します。
この人たちはなぜ下流老人になってしまったのか?
本書にはいくつかの事例が記載されていますので、ここではその一部をご紹介します。
下流老人の生活の実態その1 親の介護離職
まず1つめの事例は、独身男性。
結婚歴はないとのこと。
40代で両親が次々に倒れ、介護が必要な状態になってしまいました。
そのため、退職をして、両親の面倒を見ることに。
50代半ばで両親が亡くなり、それを気に仕事に復帰。
しかし、地元・新潟では仕事が見つからず、首都圏に出てきたという経緯です。
老後に受け取ることのできた年金は、たったの9万円。
著者のNPO法人に相談へ訪ねるころには、餓死していたかもしれない状況でした。
年金を受給していても、生活保護を受けることができることを教えてもらい、プラス4万円の収入を得ることができ、状況は多少改善されたようです。
下流老人の生活の実態その2 働けない娘の面倒
2つめの事例は、ご夫婦の事例。
娘がいじめを原因に不登校になり、さらにうつ病となり、就業できないパターン。
30年もの間、娘は働くことができないため、ずっと夫婦で面倒を見てきました。
結果、夫婦が年金暮らしになっても、二人の年金で三人を賄わなければなりません。
年金は17万円。
毎月の生活にかかっている費用は、娘の医療費が災いして26万円。
老後破綻は目の前に迫っています。
親の介護で老後破綻というのはイメージがつきやすいかもしれませんが、意外とネットの記事で目にする機会が多いのは親ではなく子どもです。
子どもに資産を食いつぶされてしまうパターンが意外と多いです。
下流老人の生活の実態その3 長期の入院治療
3つめの事例は、親でも子どもでもなく、本人に起因した独身男性の事例です。
それは病気による長期入院治療。
心筋梗塞で1年のあいだに2回倒れたとのこと。
実はこの男性、老後資金でよく言われる3,000万円の貯金を貯めることに成功していたのです。
預貯金が1,5000万円で退職金が1,500万円。
にもかかわらず、心筋梗塞の入院治療のせいで、62歳からの7年間で3,000万円はあっという間になくなったそうです。
高額療養費制度の存在も知らなかったため、すべて自己負担。
さらに、勤務していた会社は厚生年金に加入しておらず、国民年金のみ。
結局、生活保護を受けるに至っています。
下流老人の生活の実態その4 熟年離婚
最後の4つめは、収入が多いと思われる元銀行員の男性の事例。
退職金を湯水のごとく使い、結果として熟年離婚となりました。
その結果、資産や年金は半分に。
月額12万円の年金でやりくりせざるを得なくなりました。
また問題なのは、50代半ばからすでに発症し始めていたのではないかと推測される認知症です。
そして、アパートの家賃を滞納し始め、結局アパートを追い出され、公園暮らしになっていたところを著者のNPO法人が拾ってあげたようです。
どうすれば下流老人にならずに済むか?
ここまでの事例を見ていくと、下流老人に陥る人にはいくつかのパターンが見えてきます。
1.親の介護
2.子どもの面倒
3.自身の病気
4.熟年離婚
5.認知症
親、子ども、妻、そして本人。
身近な人との関わり方がものすごく大事であることに気づかされます。
また、自身の健康がやはり重要であることを再認識させられます。
さらに、最初に登場した「3つのない」を回避することを忘れてはいけません。
①収入が著しく少ない
②十分な貯蓄がない
③周囲に頼れる人間がいない
そもそも収入が少ないという点については、老後も働くことを選択肢として考えるべきですが、実際のところ高齢者向けの仕事があるかどうか定かではありません。
となると、いかに多額の預貯金を貯めておくことができるかが勝負となるかもしれません。
そして、近隣の住民や親せきなどとの付き合いを通じて、いざというときに相談できる人を身近に作っておくことが大事です。
つまり、人・お金・健康、この3つが下流老人への転落を防いでくれることになります。
具体的な対策としては、以下のようなことが挙げられます。
・現役のうちに貯められるだけ貯金しておく
・社会保障制度を調べておく
・地域社会の活動への積極的参加
・病気の予防に努める
まとめ
以上いかがでしたでしょうか?
下流老人とは何か、その定義や成果の実態についてお分かりいただけましたか?
解決策はこれだけの問題になってきているのであれば、本来なら国が示してほしいところです。
しかし、本書の出版から3年以上が経過した現在でも、状況はさほど改善されていないように見えます。
となれば、やらなければいけないのは自己防衛ということになります。
社会の制度が変わることを願いつつ、そして希望ある老後を迎えるためにも、自身でやれる準備は行っていきましょう。