もし本当に年金がなくなったら老後資金はいくら必要?
金融庁は5月22日、「『高齢社会における資産形成・管理』報告書(案)」を発表しました。
その中で、現状では「公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある」と明言。
国民に「自助の充実」を呼びかけました。
これにより、国民は年金をあてにできなくなり、自身で老後資金を捻出しておかなければ老後破産の道を辿ることが明白となりました。
それならば、一体いくらの老後資金を用意しておけばよいのでしょうか?
今回は老後資金をざっくりと試算しておきたいと思います。
老後資金の計算方法
このブログでは何度か取り上げてきた老後資金の計算方法です。
ネットでよくある「老後資金は3000万円」という話は、一応根拠は存在しています。
しかし、老後資金がいくら必要かは「人による」というのが正解。
だから、自分はいくら必要なのかを計算しておかなければいけません。
計算式は極めてシンプルですから、実際に計算してみましょう。
1.生活費
1ヶ月をどれくらいの金額で暮らしていけるか。
これが老後の生活の最大の課題となるでしょう。
もし1ヶ月10万円の生活費で暮らしていければ、10万円×12ヶ月×35年=4200万円が必要となります。
要するに、この1ヶ月の生活費が分かれば、老後資金の大半は計算できます。
大事なのは、1ヶ月いくらかけて生活しているのか、現状を把握できているかどうかです。
現在の生活費が分からないようでは、老後の生活費など読めるわけもありません。
2.イレギュラーな支出
老後にかかる費用は、毎月ある程度決まった支出となる生活費だけではありません。
老後に限らずですが、どうしてもイレギュラーな支出が発生します。
老後を35年と想定していますが、35年もの長い時間があれば、いろいろなことが起こるでしょう。
身近なところで言えば、家電製品が故障することが高い確率で発生するでしょう。
30年以上にも渡り、何も故障せず使い続けることはそう簡単なことではありません。
スマートフォンなら2年ごとに買い替えが発生したり。
さすがに老後にそこまでする必要はないかもしれませんが、買い替えが発生する可能性は高いでしょう。
また、一軒家なら住宅を老後仕様にリフォームする必要が出てくるかもしれません。
自動車を所有している人なら、車の買い替えも必要になるでしょう。
高齢ドライバーの問題が気になるところですが、車が無ければ生活できない地方などでは十分考えられる話です。
そして、高齢者ならではの問題。
それが医療費、介護費、そして老人ホーム入居です。
特に老人ホームを検討しているのであれば、別途費用は計算しておく必要があります。
イレギュラー支出は、人にもよりますので大きく前後しますが、目安は1500万円としておきます。
よって、生活費と合わせて5700万円が用意しておくべき老後資金となります。
3.退職金
退職金がある人は、上記した生活費とイレギュラーな支出から退職金を差し引くことで、用意すべき老後資金を算出できます。
しかし、退職金についても過剰な期待はできません。
なぜなら、ここ15年から20年の間に退職金が1000万円減ったと言われているからです。
現在40代の人であれば、定年まであと15年前後ですから、さらに退職金は少なくなることが濃厚。
高額の退職金をあてにしている人は、再考すべきでしょう。
老後資金を少なくする2つの方法
老後資金を5700万円貯めるのは、かなり難しいことです。
金融資産を5000万円以上保有する人の割合は、最新の調査結果によると8.3%しかいません。
5700万円貯めるのが難しければ、老後資金を減らす方法を考えなければいけません。
どうすれば老後資金を少なく済ませることができるのでしょうか?
1.生活費を抑える
まずは何といっても毎月の生活費を抑えることです。
今回の試算では10万円で老後資金を算出しましたが、さらに減らすことができれば、老後資金を減らすことが可能です。
老後の生活費は食費を中心として、徐々に減ってくるとは思いますが、できる限り減らすことが理想です。
2.収入を得る
もう一つは、あらかじめ老後資金を蓄えることができないのであれば、収入を得ることです。
働いて収入を得るのが最も手っ取り早い方法かもしれません。
投資などで収益を得ていくという方法もあるでしょう。
何かしらの形で収入を得続けることで、準備しておく老後資金は減らすことができます。
ただし、労働による収入に頼る場合、いつまでも働き続けられるわけでもありません。
別の収益源も考えておくか、やはり極力お金のかからない生活ができるようになっておくべきです。
年金が完全になくなるわけではない
ここまで必要な老後資金について述べてきましたが、念頭に置いておくべきことがあります。
それは、年金が完全に破綻し、支給されなくなることが決定したわけではないということです。
あくまで現時点においては、 「公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある」という話。
つまり、支給年齢を現在の65歳からさらに遅らせたり、支給額を減額することで制度自体の維持は可能であるということです。
仮に1ヶ月5万円でも支給されれば、先ほどの用意すべき老後資金は5万円×12ヶ月×35年=2100万円減ることになります。
年金制度には残ってもらいたいので、こんな少額であってもプラスはプラス。
5700万円必要だと思っていたら3600万円で済むのなら、これは非常に助かる話です。
あてにはしづらいですが、なんとか年金には残ってもらいたいところ。
残らないなら、これまでの掛け金は返してもらわなければいけないのが筋ですが、年金制度の仕組みからして難しいでしょう。
まとめ
以上『もし本当に年金がなくなったら老後資金はいくら必要?』でした。
あくまで参考値ですが、5700万円用意できれば、どうにかなりそうです。
ただ、現実的に5700万円貯められる人は10%にも満たないため、かなり厳しいのも事実です。
ですから、年金が破綻して、まったく何も支給されなくなるというのは極めて危険であることが分かります。
制度の存続を願いつつも、自己防衛を考えておくべきでしょう。