年金を60歳から「繰り上げ受給」して、老後の生活が「崩壊寸前」な男性の悲劇

どうも。『毎日が祝日。』いわいです。

今日はネットで見かけたこちらの記事から。

年金の受給に関してです。

「早くもらえるなら」と繰り上げ受給を選択する人が一定割合でいるようですが、なにやら気になるタイトルの記事です。

早速中身を見ていくことにしましょう。

高収入サラリーマンの遅い結婚と早すぎる妻の死

竹田信義さん(仮名・69歳、以下同)が今回の記事の主役となる人です。

現在の家族構成は以下のとおり。

【竹田家の家族構成(現在)】
竹田信義さん(69):65歳で定年後、5年近く古巣の企業に嘱託で勤めている。近いうちに退職し年金暮らしになる予定
竹田美江さん(故):9年前にすい臓がんで亡くなる。享年49歳
竹田信之さん(27):自動車メーカーに就職し、現在は一人暮らし
竹田義則さん(25):薬科大学の5年生で、実家にて父親と同居している

奥さんが49歳という若さで亡くなられています。

また次男が薬科大の5年生でまだ学費を支払う必要があります。

武田さんはすでに年金を受給しています。

非常に苦しそうですが、10年前はおそらく想像もつかなかったと思われます。

なぜなら夫婦で1300万円の年収を誇っていたからです。

10年ほど前の竹田家の年収は、夫の信義さんが約800万円、妻の美江さんが約500万円の合計1300万円。高収入世帯と言えますが、支出も少なくありませんでした。子どもは2人とも中学から私立に通っていたため、1人につき年間の学費が約100万円かかります。さらに大学受験に向けて塾にも通っていて、教育費はかさむ一方。

また数年前に新築で都内にマンションを購入しており、住宅ローンの支払いが月に15万円ほどありました。食べ盛りの男子が2人いるため、日々の食費だって馬鹿になりません。しかし預貯金が1000万円あったこともあり、竹田さんはどこか楽観視していたそうです。

学費と住宅ローンという典型的な出費が重くのしかかっていたようです。

そんな折、60歳を迎え、年金請求書が届くと「もらえるものはもらっておこう」と年金事務所へ足を運ぶのでした。

これがその後の大きな悲劇を招くとは想像もできなかったでしょう。

年金受給開始後に襲った大いなる誤算

確かに60歳以降はそれまでの年収を維持するのは不可能で、夫婦合わせて900万円まで落ち込む計算でした。

傍から見れば60歳で900万円なら十分なレベルのはずです。

しかも年金の繰り上げ受給は1ヵ月で0.5%、5年で30%もの減額になります。

(※2022年4月から減額率が0.4%に緩和)

興味本位で繰り上げ後の見込み額をシミュレーションしてもらった竹田さん。その結果60歳から繰り上げ受給すると、もらえる額が月額約4万3000円になることがわかりました(満額約74万円の70%)。これに特別支給の老齢厚生年金の2万円が加算されるため、月に約6万3000円になります。この場合、竹田さんが60~65歳の期間の竹田家の年収は約977万円まで増えます。

老齢基礎年金は月額4万3000円、年間で約52万円。

そして特別支給の老齢厚生年金が月2万円。

子どもの学費や住宅ローンでお金がかかるこの先の数年間、月6万円も収入が上乗せされるのは非常に魅力的に映ったようです。

さらに65歳からもらえる年金額は231万円との試算になりました。

仮に60歳から繰り上げ受給した場合、65歳からもらえる年金額は約231万円。繰り上げしないときよりも年に22万円減ってしまいます。

繰り上げず65歳から受給する場合は約253万円で、22万円減少します。

しかしその頃には住宅ローンの返済も終わっているという気の緩みがあったのかもしれません。

竹田さんは働き続ける予定だったにも関わらず、そして職員からのデメリットの念押しにも関わらず繰り上げ受給を決定しました。

しかし悲劇が訪れます。

奥さんが癌であることが発覚。

治療の甲斐なく亡くなられました。

年金事務所で判明した意外なルール

奥さんが亡くなられ、遺族年金を請求しようとしたとき意外なルールを知ることになります。

試算の結果、息子2人の父親として年額約181万(遺族基礎年金が約120万円、遺族厚生年金が約61万円)を受け取れることが判明。美江さんの給与がなくなった竹田家には朗報でした。

しかし65歳未満の人は、「1人一つの年金しか受け取れない」というルールがあります。すでに竹田さんは老齢基礎年金の繰り上げ受給を始めているため、遺族年金と選択しなければなりません。

すでに受給開始していた老齢基礎年金は約52万円だったので、金額の高い遺族年金の受給を選択しました。

つまり、わざわざ繰り上げ受給を選択したのに受給できなくなってしまいました。

遺族年金にも以下のようなルールがありました。

遺族基礎年金の受給資格は、子どもが18歳の3月31日になるとなくなります。長男が高校を卒業すると遺族年金は約159万円に減り、次男が高校を卒業した後は遺族厚生年金の約61万円のみとなってしまいました。

遺族基礎年金の受給資格は子どもが18歳の3月31日まで。

それを過ぎるとなくなってしまったのです。

なんとか2人の子どもを育て上げ、その後竹田さんが65歳になり、実際に受け取れた金額は一体いくらだったのか?

本来であれば253万円でしたが、繰り上げ受給したので231万円のはずでした。

ところが実際に受け取れた年金額はもっと少ない「約192万円」だったのです。

現実に65歳になった竹田さんの年金額は、なんと「約192万円」でした。ここで、前編で説明した「加給年金」を思い出してください。先ほどの「231万円」という数字には、美江さんが64歳になるまで受け取れるはずだった「配偶者加給年金」の約39万円が含まれます。

盲点は「加給年金」でした。

「加給年金」は以下のように説明されています。

なおこの中には、39万円の「加給年金」が含まれています。「加給年金」とは65歳になっても扶養する配偶者や子どもがいる場合にもらえる年金のことで、竹田さんの場合は「配偶者加給年金」の条件を満たしていました。竹田さんが65歳になってから、妻の美江さんが64歳で「特別支給の老齢厚生年金」をもらうようになるまで、11年間ずっと受給できるのです。

独身である私にとって「加入年金」は盲点でした。

結局奥さんの退職金を切り崩しながら生活するという状況です。

さらに今年の4月からはマクロ経済スライドで年金が0.4%も減額されます。

年金を受給している中でも金額はどんどん減っていくのです。

考えうるライフプランを1パターンでも多くシミュレーションすべし

「もし奥さんが生きていれば」と思わせる事例ですが、実際に起こりうる話でもあります。

要するに「見通しが甘い」という一言がバッサリ斬られる話なのです。

竹田さんは今後の見通しで二人の収入がある前提で話を進めていました。

ここに大きな落とし穴がありました。

少なくとも65歳以降は二人とも収入がなくなる前提くらいに考えておかないといけないでしょう。

サラリーマンであればなおさらです。

夫婦なら今回の事例のように一方に万が一のことが起きた場合も想定しなければいけません。

いろいろなパターンを想定して、シミュレーションをして将来を決めないと、本当に怖い未来が待つことになるでしょう。

安易な繰り上げ受給もやめたほうがよいのではないかと思わざるを得ない事例でした。

まとめ

以上『年金を60歳から「繰り上げ受給」して、老後の生活が「崩壊寸前」な男性の悲劇』でした。

いかがでしたか?

年金は非常に難しく、詳細に制度を理解している人はそう多くはないでしょう。

この4月からもいくつかの制度変更が行われました。

できるだけ不安の小さい老後を迎えられるよう、年金に関しては自分が関係しそうな制度周辺くらいは情報収入に努めておくべきだと改めて思いました。

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むしろ敬遠されがちな繰り下げ受給の方が使える制度かもしれません。